私には当初、霊とか神といった物質以外の存在を認める余地は全くなかった。しかし事実というのは頑固なものである。私は事実という名の鉄槌に打ちのめされ、霊的な現象を事実として認めざるをえなかった。それは事実を一つ一つ積み重ねていくという、絶え間ない努力の結果である。
アルフレッド ウォーレス（博物学者）
霊的に優れた人ほど、試練が大きくなる
前回の記事では、天国の上層界から下層界への霊的エネルギーの流れや、霊性の著しく低い人々を救済すべく、１４名の配下を率いて暗黒界へ向かった霊団のリーダー・アーネルの言葉をご紹介しました。
アーネルは１４世紀頃に英国人として生き、イタリア・フィレンツェに移住して絵画と音楽の教師をしていた人です。その一生は苦難の連続で、彼はキリスト教組織が強力な社会権力を持っていた時代に、教義から離れた視点から神の愛を説いていたため執拗な迫害を受けました。
どの時代、どの分野でも先駆者が生きる道は周囲から孤立したり、社会的非難にさらされがちですが、当時としては霊的に時代の最先端を生きていたアーネルもまた「悪しざまに言われ、おおいに孤独を味わった」と語っています。
人は人生で経験した苦難の意味を、死後、一点の曇りもない霊的な視点で、はっきりと理解することになります。アーネルが地上人生で数々の試練に遭遇したのも、死後の世界を含めた壮大な人生計画の大切な一部でした。
彼は死後、霊団のリーダーになって暗黒界を探訪し、霊的知識を地上人類に伝える活動に従事しました。その重大な責務に備えるために、地上人生で様々な試練を経験し、いかなる難題をも乗り越えられる強靭な精神力と苦境に立たされた人への深い理解力を身に着ける必要があったのです。
アーネルのように、霊的に優秀な人ほど人生における試練も大きくなります。正しい道を進んでいても四面楚歌になって非難を浴びせられたり、今日一日を生きる糧にも苦労したりと、もう頼るべきところも寄り添える人もいないと思えるほどの窮地を経験することもあります。
そんな時、人生への考え方をこの世限りの物的な視点にのみ頼ってしまうと、人は自分を不運とか不幸だと悲観しがちです。
少し視点をずらして、地上人生は永遠の霊的生命活動のほんのわずかな期間にすぎず、何事も修行にすぎないと霊的視点から達観してみると、心がふと軽くなるかもしれません。
高くジャンプする時は、必ず一旦膝を曲げて低く沈む必要があるように、人生における霊的成長も、低く沈んだ経験のある人だけが、その分確実に高いところへ到達できるようになっています。低く沈むことは決して不幸や不運ではなく、本当の幸せを心で理解するための必須のプロセスなのです。
次に、靴職人をしていたある男性の死後の世界の実話をご紹介します。人生を、死をこえた視点から見つめてみましょう。
本当の成功者＊つらい時も愛を忘れない
ある時、靴職人を生業にしていた男性が他界しました。彼の一生は貧苦との闘いで、他界時には、財産は全く残っていませんでした。
男性が死後導かれた界層には、すでに住むべき家が用意されていました。家には一冊の本がおいてあり、彼がその本を精読していると、身体から大変美しい光輝を発する人が、彼の自宅を訪れてきました。明らかに霊格の高い高級霊でした。高級霊は男性に尋ねました。
高級霊：何を読んでいらっしゃるんですか？
男性：ここよりも高い界層での霊団の活動内容や霊団のリーダーのための教訓についてです。遠い未来に必要なことかもしれませんが、なぜ私の家に置いてあったのか理解できません。
高級霊：この本はあなたのものですよ。ここはあなたが死後の世界に順応するための、一時的に滞在する界層にすぎません。あなたには、より高い界層で使命が待ち受けています。
男性：私はただの靴職人です。誰かを指導するような人間ではありません。私はここで満足です。
高級霊：その謙虚さこそ、上に立つ者の絶対的な条件です。あなたは地上人生でも、靴を作る時にできるだけ長持ちさせて貧しい人の財布の負担を軽くしようと考えていました。儲けることではなく、思いやりが生活の中心でした。親切心こそあなたの人生観の全てでした。霊の世界ではその徳こそ尊いのです。あなたは生活費がひっ迫していたにも関わらず、困っている人たちに手を差し伸べ続け、病気の友人を見舞っていました。あなたの霊体の光輝が、それを全て物語っています。あなたのように霊的に正しい生活をした人の身体は明るく照らし出され、邪悪な生活を送った人の身体は、暗く陰鬱に映ります。実はその本にある高い界層に、あなたの到着を待ちわびている霊団がいます。その霊団の任務は、地上近くの低い界層で、他界直後の人々の世話をすることです。あなたがその霊団のリーダーです。
男性：私にはその資格があるとは思えません。霊団の方々は私の知らない人ばかりで、私には従わないでしょう。
高級霊：人は皆、睡眠中に霊体で天国を訪れ、死後の世界に順応できるよう準備をしています。あなたも地上人生を送っている間に、睡眠中にこれから行く界層を何度も訪れ、霊団に入って訓練を積んでいました。会ってみれば、顔見知りの人ばかりです。皆あなたのことをよく知っています。
その言葉に意を決した男性は、高級霊と共に高い界層へ向かいました。霊団のメンバーと会った時、彼の脳裏に睡眠中の記憶が蘇り、リーダーとしての自覚と自信が満ちあふれてきました。
高級霊の言葉にあったように、一生を終えた後、その人が地上人生で培ったありのままの精神性が光輝となって霊体に反映され、誰の目にも一目瞭然になります。
また、霊の世界には無数の霊団が存在し、高度に組織化されています。そこに見せかけのリーダーや威圧的なリーダーは存在せず、上に立つ立場の人ほど、靴職人の男性のように心に多くの愛を携えています。
霊的知識を一人でも多くの人へ
アーネル率いる霊団は、暗黒界の住人の救済任務のあと、最高位の界層に暮らす高級霊から、霊的知識を地上社会に広める任務を言い渡されました。何度か当ブログでお伝えしたシルバーバーチ霊団よりも前のことです。
元々、霊の世界において霊的知識を地上社会に広める計画は、紀元前より存在しました。本来、宗教がその役割を果たすはずでしたが、地上に根付いた宗教が組織的権力を持つにつれて、霊的知識とは全く無関係の人工的な教義が氾濫し、地上世界に無数の流血と人類の分断を招いただけでなく、霊の世界においても多くの人を大混乱を陥らせる結果となりました。愛に満ちた高級霊でさえこの事態を「霊的知識の横領」として、地上の既存宗教組織と関係者を厳しく糾弾しています。
今度こそしっかり地上社会に霊的知識を浸透させるべく、高級霊が集結して空前絶後の大規模組織を構築して立案された霊的知識普及の計画が、１９世紀半ば頃に実行されました。現代は２１世紀ですが、霊的視点ではまだまだ始まったばかりです。
アーネル霊団は、その計画の中のごく初期段階に、最高級霊団より依頼を受け地上社会に霊的知識を広める任務を担いました。任務を遂行するには、地上社会に暮らす人々の中から、確かな霊能力を携えている人物を選ぶ必要があります。人選のプロセスは大変慎重に行われ、候補となる人物は私生活から普段の思考回路、霊的発達度まで隅々まで調べられます。
アーネルが選んだのは、イギリスで牧師をしていたジョージ オーエン(1869-1931)でした。
オーエンは最初、１９０９年に６３歳で他界した彼の母親からメッセージを受け取りました。その後は１８世紀にイギリスで校長先生をしていたアリストエル、裁縫の仕事に従事し１８９３年に２８歳で他界したカスリーン、オーエンの霊的ガイドのザブディエルなど、アーネル霊団に属す霊が次々に霊的知識をオーエンに伝えました。
最後に霊団のリーダーであるアーネルが、以前お伝えしたスパイラルの原理や、先程お伝えした靴職人の方のお話など、最重要知識の数々を伝えました。
そして、驚くべきことにアーネル霊団の中に、オーエンの最愛の人がいました。１歳で亡くなった娘のルビーです。霊団からの霊界通信が始まった時には、ルビーはすでに大きな霊的成長を遂げ、霊団の一員として立派に活動していました。
オーエンは牧師ということもあり、それまで信じぬいてきたキリスト教教義と、霊団が伝える教義に反した内容を含む霊的知識との狭間で何年も葛藤に苦しみましたが、結局は霊的知識を優先する決断をし、受け取った霊的知識を”The Life Beyond the Veil”として出版することになりました。
その結果、モーゼスの霊訓、シルバーバーチの霊訓と共に、英国三大霊訓として世界的ロングセラーとなりました。
オーエンの振る舞いに激怒したイギリス国教会は改心を迫りましたが、オーエンは国教会からの要請を断固として拒否し辞職しました。そして、書籍の印税の受け取りをも拒否したため生活は困窮を極めましたが、「シャーロック ホームズ」の著者で知られる作家コナン ドイルの支援を受け、１９３１年に６１歳で他界するまで、余生を霊的知識普及に捧げました。
出典：Goodreads | Meet your next favorite book
真実を真実として証明した人たち
ジョージ オーエンだけでなく、１９世紀から２０世紀にかけて、霊的知識の普及に関わった人は、社会的弾圧と無関係ではいられませんでした。この時代、ある民家で起きた霊現象をきっかけに、当時の科学者や文学者、法学者など各分野で権威を持つ知識人たちが、霊能力や霊現象の科学的実験にこぞって参加しました。
なぜ霊が音を立てたり、物を動かすことができるのか。その背後にどんなメカニズムがあるのだろう。まだ知られていない物質があるのではないか、と素朴な疑問を真剣に解決しようと試みる人たちが現れたのです。その結果、物体を取り巻くエネルギーフィールド（オーラ）やエクトプラズムと呼ばれる霊的な物質の存在が明らかになるなど、それまで未知だった領域が徐々に明らかにされていきました。
最初に社会に大きな影響を与えたのは、英国でサーの称号を受け、タリウム元素の発見などで世界的名声を博していたウィリアム クルックスです。彼は「近代科学に照らしあわせて、霊的世界を検証する。我々人間はまだ知識の全てを手にしておらず、物理的エネルギーについても、その深奥を究めつくしていないからである」と宣言し、霊能者の協力の元、繰り返し実験を重ねました。
科学界は「これで、霊能者は全てでインチキだと証明される」と期待を寄せていましたが、クルックスが公表した実験結果は、霊能力や霊的世界の実在を全て肯定するものでした。彼が会員を務めるイギリス国立アカデミーは、その結果の公表を拒否しましたが、それをある科学誌が掲載したところ、一大センセーショナルを巻き起こしました。
クルックスのように、各分野の権威とされる人たちは、実験前は霊の世界の存在に懐疑的な人ばかりでした。中には実験には一切参加せずに、霊的なことを完全否定して非難を続ける人もいましたが、実験に参加した人は、一人残らず全員が霊の世界を肯定する側にまわりました。
ペンシルベニア大学の名誉教授、ロバート ヘアは、１５０以上の科学論文や多数の出版実績のある人で、当初は霊に関わることは全てがトリックだと決めつけていました。７２歳の時、「理性も科学も無視して、霊的知識という途方もない妄想に取りつかれていく狂気を、私が止める」と自らの威信にかけて、霊現象の科学的実験を繰り返し実施しました。その結果、本人の予想に反して、自らその実在を証明する結果となりました。
彼はそれを世間に公表し、霊的知識を普及する側にまわったことで、ハーバード大学から非難決議を送られたり、講演の際はひどい怒号とヤジを浴びせられ、やむなく降壇したこともありました。しかし彼は教授職を辞した上で、残りの人生を霊的知識普及に捧げました。
アメリカで大統領候補にもなった、ニューヨーク州最高裁のエドモンド判事も、「私がトリックを暴いてやる」と霊現象の交霊会に乗り込んだ直後に、意見を１８０度変え霊的世界を肯定したことで、世間から痛烈な罵詈雑言を浴びせられました。しかしロバート ヘア教授同様、霊的知識普及に後半生を捧げました。
高級霊による地上社会への霊的知識普及計画は、このように多くの各分野の第一級の知識人たちを巻き込みながら、進められました。また、真の霊能力を持つ霊能者も厳しい監視と条件の元、科学実験に積極的に参加しました。
中でも霊能者・レオナール パイパー（1859-1950）はオリバー ロッジ、リチャード ホジソン、フレデリック マイヤーズのような世界的科学者に協力し、霊能力や霊現象の証明に大きく貢献しました。彼らは社会的多数の意見に迎合して生涯を安泰に生きることもできたにも関わらず、それまで築いた地位も名声も捨て、自ら発見した真実に忠実に生きる道を選びました。
霊的知識普及に関わらず、地上世界で崇高な動機によって自分を社会のため、誰かのために役立てようと行動に移した時、必ず霊の世界からアーネル霊団のような存在が瞬時にかけつけます。
まだまだ未成熟社会の現代に生きる私たちは、人々を苦しめるような社会制度や、悪意に満ちた組織や個人に立ち向かわざるを得ない状況に直面することがあります。戦うことを決断すれば多くの困難がやってくるとわかっている時どう行動するのか、そこに人としての真価が問われるのかもしれません。
もし戦うと決断した時は、霊的知識を呼び起こし「今日まで自分をこうして導いてくれた力は、今後も決して自分を見捨てることはない」という確固たる信念が必要です。その信念が地上のあらゆる問題を解決に導く霊的援助を引き寄せます。
弱気になったり、状況の悪化を心配することが一番いけません。霊的存在である私たちは魂に神性を宿し、あらゆる状況を克服する力を内在しているのです。
もしうんざりするような状況が続いたり不安で仕方ない時は、まず問題解決のために祈ることです。そして、一旦世の中のあらゆる喧騒から身を引き、毎日数分でも瞑想して心を静穏に保つよう努めましょう。その時、あなたを取り巻く霊的援助の力が最も活発になります。
自らの精神を日々穏やかに高揚させ霊的意識を拡大していけば、霊力が人生のあらゆる場面に届き、あなたを取り巻く状況もやがて穏やかになっていきます。霊力には、人の心に直接変化をもたらし、あらゆる状況を好転させる力があるからです。
今日も最後まで希望発見ブログをお読みいただき、ありがとうございました。
Your spiritual friend,Lani
参考文献等：シルバーバーチの霊訓（潮文社）、ベールの彼方の生活（潮文社）、インぺレーターの霊訓（潮文社）、これが心霊の世界だ（潮文社）、こころが安らぐ本（大和書房）、こころが満たされる本（大和書房）、私はできる！（サンマーク出版）、すべてうまくいく（角川書店）、人生をもっと幸せに生きるために（河出書房新社）、パワーオブ・ザ・ソウル（ＪＭＡアソシエイツ）、コナン ドイルの心霊学（潮文社）
