中国古典は、現在も世界中で多くの人々に広く読まれています。日本でも戦国時代、加賀百万石の大名、前田利家が『論語』を読んで感動し他の大名に勧めたり、江戸時代には水戸黄門で有名な水戸光圀が18歳の頃『史記』を読んだことをきっかけに、それまで遊びふけっていた人格が一変したそうです。
中国古典は人間関係だけでなくビジネスや外交にまで広く重宝され、その影響力は絶大です。人間にとって本当に大切な生き方そのものは、今も昔も、そしてこれからも変わらないということでしょう。今回は、『老子』の中から3つだけことばを選び、お伝えします。
老子ってどんな人?
どれだけ調べても老子がいったい誰なのか、今もって誰もはっきりわかりません。孔子より少し前に生きた、『老たん』という説が有力です。紀元前100年頃書かれた大歴史書『史記』にその名前が出てくることを考えると、それ以前の人物であることは確かなようです。老子には、謙虚に控えめに生きることを教える言葉があふれています。
上善は水の如し(じょうぜんはみずのごとし)
上善とは最も理想的な生き方を意味します。老子は最も理想的な生き方は水のように生きること、と言っています。
水は、常に高いところから低いところへ流れます。低く、ということは『常に謙虚であれ』ということですね。また、水は丸い入れ物に入れれば丸くなり、四角い入れ物に入れれば、四角い形を作ります。老子は水のように柔軟に『順応』することの大切さを説いています。さらに、水は岩をも砕く強力なパワーを備えています。人間の心にもこのパワーがあります。『情熱』です。
常に謙虚を心掛けること。慣れない環境にも柔軟に順応すること。情熱の炎を絶やさぬこと。 簡単そうで難しい。でも、忘れないようにしたいです。
足るを知れば辱められず、とどまるを知れば、あやうからず
『足るを知る』も、簡単そうで難しいこと。今持っている身の周りの豊かさに日々感謝しつつ、ないものねだりしない生き方を大切にしたいです。
目先の利益に目がくらみ、周りが見えなくなってしまうのは、誰にでも起こりうることです。自分の利益だけ追及し、他人を顧みない行為を続ければ、結局反感を買い、長続きしません。自分の利益を追求するのなら、周りの人の利益も念頭に行動する必要がある、と老子は伝えています。また、この言葉は『止足の戒め』と呼ばれ、財産や名誉などを追い求めるあまり、大切なことを見失しないがちな、人間の尽きることのない欲望を戒めています。
敢えて天下の先足らず(あえててんかのせんたらず)
老子が説く、この世で生きて行く上で、最も大切な三つの宝、『三宝(さんぽう)』は、
『一に曰く慈、二に曰く検、三に曰く敢えて天下の先足らず』です。
『慈』は人を思いやること、『検』は控えめに、『敢えて天下の先足らず』は、人を押しのけてまで先頭に立たない、ということ。いつの時代も人間の世は、競争社会です。先頭に立ったはいいけど、その座を譲らないよう神経が張り詰め、ストレスを抱えては息切れして自滅してしまいます。敢えて先頭に立とうとせず、控えめに自分のペースを守っている人こそ、心に余裕があり、周りから見ても頼もしく見えます。自分の価値観を大切にしたいですね。そうすれば、居心地のいい場所にたどり着けるのだと思います。
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